A Comparative Study of Nominative-Genitive Conversion
2014
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unknown
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Nominative-Genitive Conversion (NGC) is the grammatical process in which Noun Phrases marked with Nominative Case alternate with Genitive Case in a certain set of environments. This dissertation conducts a comparative study of NGC within the Altaic languages by looking at Japanese, Late Middle Korean, Modern Korean, Yanbian Korean, and Turkish. It aims to elucidate the similarities and differences regarding NGC: while many languages classified in Altaic languages such as Japanese, Late Middle Korean, Yanbian Korean, and Turkish allow it, not all languages allow it, including Modern Korean. The dissertation also discusses the absence and presence of Transitivity Restriction effect on NGC.
理論言語学の領域では、ある種の従属節(関係節、名詞化従属節)において、格助詞の主格で標示される要素が属格でも標示されうる「主格・属格交替」と呼ばれる現象が注目され、しばしば取り上げてきた。「主格・属格交替」とは、日本語の例で説明すると、以下の関係節(1)で目的語が関係節化された場合に、主語が主格ガでも属格ノでも標示される現象である。この日本語の主格・属格交替には興味深い「他動性制約」という性質があると言われている。「他動性制約」とは、関係節(2b)で対格を伴う直接目的語が従属節に存在すると主格は属格に交替することができなくなる現象のことである(Harada 1971, Watanabe 1996)。(1) a. [[昨日太郎が ei 買った] 本i]b. [[昨日太郎の ei 買った] 本i](2) a. [[ジョンが 本を 買った] 店]b. * [[ジョンの 本を 買った] 店]他動性制約については様々な分析が提案されているが、多くの研究において主格が属格に標示される際に目的語が対格を得られないと分析している(Hiraiwa 2005)。生成文法の研究において主格・属格交替に関する最も大きな課題となるのは属格主語の認可であるが、他動性制約の性質を有するかどうかを明らかにするのが各言語の交替における格の認可のメカニズムを明らかにする上で一つの指標にもなる。本博士論文では、既に主格・属格交替について日本語・中期朝鮮語・現代朝鮮語・トルコ語などで比較研究が行われてきた先行研究での知見を基に、主に中期朝鮮語を扱いながら、新たに延辺朝鮮語を加えて取り組んでいる。中期朝鮮語はハングルが開発される15世紀から16世紀にかけての朝鮮語であり、延辺朝鮮語は現在も中国の延辺朝鮮族自治州で暮らす朝鮮族によって話される朝鮮語の方言である。中期朝鮮語と延辺朝鮮語は共に声調体系がある言語である。中期朝鮮語の声調は文献において文字の横の点(傍点)によって表す。また、延辺朝鮮語は、アクセント体系があると言われている朝鮮語の二つの方言、慶尚道及び咸鏡道方言のうち、咸鏡道方言を話す話者が中心であり(Miyashita 1998)、アクセント体系がある言語として知られている。本研究での内容は主に以下の三つに分類される。第一に、中期朝鮮語及び延辺朝鮮語に主格・属格交替の存在を検証する。第二に、日本語で存在が確認されている他動性制約について、中期朝鮮語と延辺朝鮮語の主格・属格交替で観察し、他動性制約の有無を検証し、制約が必ずしもどの言語でも見られるわけではないことを示す。即ち、延辺朝鮮語では日本語と同様に、他動性制約を有することが観察されるが、反対に中期朝鮮語の-om名詞化従属節にはトルコ語と同様に他動性制約の影響が見られない例を観察する。第三に、中期朝鮮語及び延辺朝鮮語の主格・属格交替現象における他動性制約の有無に基づき、主格・属格交替現象における格の認可について分析を行う。本論に入る前に、上記三つについて、簡単な説明を与える。最初に、中期朝鮮語では現代朝鮮語と違い、(「名詞化」を表す形態素-(w)omが使用されている)所謂-om名詞化従属節において、Jang (1995)の報告のように、主格・属格交替が存在することが再検証する。以下の(3)は中期朝鮮語に主格・属格交替が存在することを示している。(3) 中期朝鮮語の主格・属格交替a. [UYKUN-i CHENGCENGh-wom]-i i-kotho-lssoy…意根-主格 清浄する-名詞化-主格 このようだ-ので「意根が清浄であることがこのようなので…」(月釋17: 74a) (Suh 1977, (138))b. [UYKUN-uy CHENGCENGh-wom]-i ireho-lssoy…意根-属格 清浄する-名詞化-主格 この-ようだ-ので「意根の清浄であることがこのようなので…」(釋詳19: 25a) (Suh 1977, (139))現代朝鮮語では、属格が所有格としてのみ機能し、格認可を受ける属格は存在しないとSohn (2004)が主張しているが、中期朝鮮語では、-om名詞化従属節には所有の対象となる主要名詞がなく、(3b)の属格で標示されるUYKUN「意根」が名詞化接尾詞-omを修飾できないため、現代朝鮮語とは違い、属格が所有格ではないことが明らかであり、所有格以外でも使用される。次に、延辺朝鮮語では関係節でピッチアクセントによって主格・属格交替現象が生じる事実を観察する。延辺朝鮮語の格助詞の主格と属格は、共に分節音-iが使われるが、二つの格助詞はピッチアクセントで区別される。つまり、[名詞句-主格]の一体物のピッチアクセントは「H-型」であり、[名詞句-属格]のピッチアクセントは「L-型」である。「H-型」というはピッチアクセントにH(高)ピッチが必ず含まれることを指す。また、「L-型」とはピッチにL(低)ピッチが続くことを指す。例えば、(4)に見られるように、主節(4a)において、主格で標示されるaytuli 「子供達」のピッチはHLLであり、属格(所有格)で標示される場合はLLLである。(5)の関係節内での主格・属格交替でaytuli 「子供達」は二種類のピッチアクセント(HLL, LLL)で発音されるが、(4)の主節で観察される主格と属格で標示される時のピッチアクセントにそれぞれ一致する。(4) 延辺朝鮮語の主格及び属格におけるピッチアクセントa. ay-tul-i (HLL)/*(LLL) i-ss-ta (LHL).子供-複数-主格 いる-過去-終止「子供達がいる.」b. ay-tul-i (LLL)/*(HLL) wos (H)子供-複数-属格 服「子供達の服」(5) 延辺朝鮮語の主格・属格交替a. [[caknyeney (LLH) aytul-i (HLL) mek-un (LL)] paychay (HL)]去年 子供達-主格 食べる-連体形.過去 白菜「去年子供達が食べた白菜」b. [[caknyeney (LLH) aytul-uy (LLL) mek-un (LL)] paychay (HL)]去年 子供達-属格 食べる-連体形.過去 白菜「去年子供達の食べた白菜」(5)で見られる二種類のピッチアクセントは従属節の中でも関係節だけで観察されるものである。また、(5b)の属格(L-型ピッチ)で標示される名詞句aytuliが副詞caknyeney「昨年」の後にくる場合、名詞句の修飾語として主要名詞のpaychay「白菜」を修飾することはできないので、所有格ではない。以上から延辺朝鮮語の関係節における二種類のピッチアクセントの交替は主格・属格交替現象によるものとして説明される。さらに、中期朝鮮語及び延辺朝鮮語の主格・属格交替に日本語のように他動詞制約の性質があるかどうかを調査する。中期朝鮮語の-om名詞化従属節において属格主語を含む節で対格を伴う直接目的語が存在することを観察したので他動性制約の性質がないことが分かったが、関係節では属格主語と対格を伴う直接目的語が共起する例が発見されず、他動性制約が影響を及ぼしていると推測される。また、延辺朝鮮語で対格を伴う直接目的語が関係節の中に現れる場合には属格主語(L-型ピッチ)は許されないことから、他動性制約の性質があると見ている。加えて、本研究では他動性制約を調査する中で中期朝鮮語と延辺朝鮮語の属格主語が対格を伴わない裸の目的語(bare object)と共起することを観察している。しかし、裸の目的語は一定の条件が満たされた場合に、名詞抱合(noun incorporation)し、対格を必要としないと分析できるので(Baker 1988, Yanagida and Whitman 2012)、他動性制約の性質において、裸の目的語が対格を伴う直接目的語と同様に分析できない場合があることについて指摘する。最後に、本稿では主格・属格交替における他動性制約の性質から格の認可を課題に、日本語とトルコ語などと中期朝鮮語、延辺朝鮮語を比較し、他動性制約の影響について説明を行っている。他動性制約は一般的に主格が属格に標示される際に目的語が対格を得られないと分析され(Hiraiwa 2005)、目的語の認可には従属節にCという統語要素が関与していると分析されている(Miyagawa 2003, 2011)。延辺朝鮮語は、主格・属格交替において日本語と同じく他動性制約の性質があることから、延辺朝鮮語の属格主語を含む節には対格を認可するCが存在せず、反対に中期朝鮮語の-om名詞化従属節はトルコ語に似て他動性制約の性質がないことから、トルコ語と同じくCが存在すると分析される。
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A Comparative Study of Nominative-Genitive Conversion
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Veröffentlichung: | 2014 |
Medientyp: | unknown |
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